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有機栽培は農薬を使わないの? 有機栽培の農家がクリアしている条件とは

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2020.06.03

有機栽培という言葉を耳にする機会が増えましたが、正しく意味を理解できていますか?実は、有機栽培(有機農業)には厳密な定義や規定があります。

有機栽培とはどんな農業方法なのか、有機栽培では農薬を使ってはいけないのか、有機栽培ができる農家の条件などを詳しく解説します。有機栽培への理解を深め、食品の購入の際などに役立てましょう。

有機栽培は農薬を使わないの?

黄色い耕運機有機農業(有機栽培)は、どのような農業なのでしょうか。有機農業という語彙の定義や、農薬を使用できるかどうかについて説明します。

有機農業・有機農作物の定義とは?

「有機農業」「有機農産物」という言葉は、平成18年度に策定された有機農業推進法によって定義づけされています。農業なので、管轄は農林水産省です。

「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。」という定義に基づき、有機農業の内容を解説します。

1. 化学的に合成された肥料・農薬を使用しない

有機農業では、化学的な肥料や農薬を使用することは固く禁じられています。害虫予防や生育などを目的とした農薬・肥料の使用は、規定された有機物のみに限定されているのです。

有機農業で使用許可されている肥料や農薬の例をいくつか挙げると、油かす類、草木灰、食酢、マシン油エアゾル、シイタケ菌糸体抽出物液剤などがあります。名前だけ聞くと難しいものもありますが、天然の生物由来のものと考えればいいでしょう。

2. DNAの組み換え技術を利用しない

有機農業では、遺伝子組換え技術はNGです。

科学の発展により、DNA組換えを行った作物も世の中に数多く出回るようになっています。しかし、たとえ化学肥料を使っていない場合でも、遺伝子組換えを行っている時点で「有機」を名乗ることができなくなってしまいます。

遺伝子を組み換えるということは、生物が本来持っている遺伝子を人為的に変換すること。有機農業では自然の力を生かすことが重視されているので、組換えDNA技術を使用することはタブーなのです。

当然ですが、遺伝子組換えを行った肥料を使うことも許されません。

3. 環境への負荷をできる限り低減した方法で生産する

有機農業では、環境に対する配慮も重視されています。上でお伝えした、化学的なものを使わずに育てることやDNA組換えをしないことももちろんですし、防虫や品種改良等を目的とした放射線照射もNGです。

地球環境は、悪化し続けているのが事実です。しかし、土の中に眠る微生物の力を生かす、動物の糞尿をたい肥にする、川や湖・井戸の水を利用するなど、できる限り天然の資源を生かして生産を行うことが求められます。

つまり、有機農業はエコにもつながるということですね。

有機栽培=無農薬ではない!

有機栽培では、農薬をいっさい使用しないというわけではありません。使用が禁止されているのは、”化学的に合成された”農薬や肥料です。

使うことが許されている肥料や農薬は、農林水産省の規格「別表1」「別表2」にリストアップされています。天然由来のものであれば、基本的に使用可能です。

なお、近年は「無農薬」という言葉の使用は原則禁止されています。農薬を使っていなくても残留農薬がある場合もありますし、どこかから飛来してくる可能性もあるためです。

現在は農林水産省が規定した内容に基づき、農薬の使用を控えた作物は「特別栽培農産物」という名称で呼ばれています。

有機栽培の農園・農家がクリアしている条件とは?

畑の先の太陽有機農業の定義をふまえ、次は有機栽培を行っている生産者に焦点を当ててみます。どのような条件を満たしていれば、「有機栽培農家」と名乗ることができるのでしょうか。

日本では、国際的な食品規格を定める「コーデックス委員会」という機関のガイドラインに則して、有機農産物の日本農林規格を規定しています。この条件を達成していないと、有機栽培農家にはなれません。

1. 周辺から使用禁止資材が飛来・流入しないように対策している

「使用禁止資材」とは、有機農業において使ってはいけないと規定されている、化学的な肥料や農薬等のことです。誤って混ざってしまうのもNGです。そのため、たとえばよそから風で飛ばされてきたり、水に溶けて流れてきたりしてもいけません。

有機栽培農家は、使用禁止資材が混入しないために必要な対策をしておくことが必須です。

2. は種又は植付け前の2年以上、化学肥料や化学合成農薬を使用していない

「は種」とは種まきのことを言います。有機栽培を行う「ほ場」(田んぼや畑)では、種まきや植付け前2年以上の間、化学的な農薬・肥料を用いていないことが条件の1つです。

かつて化学肥料や化学合成農薬を使っていたほ場でも、使用をやめて2年以上経てば有機栽培を行えます。今化学肥料を使っている生産者も、期間を空ければ有機栽培に転換することが可能なのです。

3. 組換えDNA技術を利用していない・放射線照射を行っていない

組換えDNA、つまり遺伝子組換え技術とは、たとえば育てたい豆Aの粒をより大きくするために、別の品種の「粒を大きくする」という遺伝子だけを取り出して、Aの細胞の中に人為的に組み込むことです。

つまり、人工的に手が加えられているので、有機農業の考え方に反していると考えられます。

また、農業分野では、害虫防除や芽止め、品種改良などの目的で放射線を使用していることがあります。しかし、有機農業では放射線照射は認められていません。

逆に言えば、有機栽培ではない食品の場合、放射線が照射されていると知らずに口にしてしまっている可能性もあるということです。おそろしいですね。

有機栽培のお野菜やお茶はどこで見分けられるの?

元気いっぱいキャベツ有機栽培された野菜やお茶を買いたくても、見分け方がわからないとどうすればいいかわかりません。スーパーに行って、「これは育ちがいいから有機農産物かな?」と適当に判断するわけにもいきませんよね。

実は、有機栽培された農産物は、一目でわかるような仕組みがありました。詳しくチェックしみましょう。

有機JAS認定|日本の有機農作物や加工品の認定規格

日本では、JAS法という法律に基づいた「有機JAS」という規格があります。有機栽培された作物であると指定機関によって認められたものは、有機食品として認証されます。

有機JASとして認められる食品は、農産物加工食品飼料畜産物の4ジャンルです。それぞれに詳しい規格が定められています。

販売商品を見分ける方法|有機JAS認定マーク表示をチェックしよう!

有機JAS認証を受けると、どのようないいことがあるのかというと、「有機JASマーク」をもらうことができます。有機JASマークは、緑色で描かれた太陽・雲・植物をイメージしたマーク。一度は目にしたことがある方も多いことでしょう。

日本で堂々と「有機栽培」を名乗れるのは、この有機JASマークを受けたものだけ。そのため、いくら我流で有機栽培をしていても、専門機関に認められていない場合は「有機」という表示をすることも禁止されています。

有機栽培には農薬の使用自体は認められている

広大な畑有機農業には厳しい基準があり、非常に奥が深いものです。1日2日でできあがるものではなく、歳月をかけ、自然のものを大切にしながら育て上げていくのです。

化学的なものが悪というわけではありません。しかし、体への影響や環境への負担を考えたときに、有機農業の食品を選びたいと思うなら、ぜひ普段の食生活を見直すことから始めてみてください。

いつも利用しているスーパーでも、有機JASマークがついた食品が見つかるかもしれません。さっそく今日の食卓に有機食品が並ぶと、気分も上がることでしょう。

参考:
【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~(農林水産省)
有機農産物の日本農林規格(農林水産省)
有機農業・有機農産物とは(農林水産省)
有機食品の検査認証制度(農林水産省)
遺伝子とは? ー遺伝子の本体はDNAー(農林水産省)
農業分野の放射線利用(内閣府原子力委員会)
有機JAS制度について(農林水産省)

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