「マクロビオティック」と聞くと、肉を食べるのがNGという印象があるかもしれません。しかし、くっついた言葉を分解してみると、「マクロ(長い)」「ビオ(生命)」「ティック(術)」、つまり「長寿法」に焦点を当てた食事や考え方のこと。必ずしも肉がNGというわけではありません。
今回は、マクロビの考え方では肉を食べることについてどう考えられているかや、マクロビオティックとベジタリアンとの違いについて解説します。
マクロビオティックは肉を食べてはいけないの? 玄米菜食とは?
マクロビオティックにおいて、肉は禁忌だと思っていませんか?実は、「マクロビ=肉はNG」というわけではありません。そこで、マクロビオティックの基礎的な思想や、マクロビでよく耳にする「玄米菜食」について詳しくお話しします。
マクロビは日本で確立された健康を長く維持する食生活の知恵
マクロビオティックと聞くと、横文字なので外国から入ってきた言葉だと思った方もいるかもしれません。しかし、マクロビオティックはもともと桜沢如一という思想家によって提唱された、日本発祥の「長寿法」のことです。
健康的に長生きをしようという考え方から、和食を中心とした食事方法を取り入れ、体を大切にしながら人生を送ることを目指します。
マクロビオティックのキーワードを理解しよう
ここからは、マクロビオティックの思想において重要な3つのキーワードを学びましょう。
身土不二|地元のものや風土にあったものを食べる
身土不二(しんどふじ)とは、「自分の体(身)と、今いる環境/土地(土)は切り離せない(不二)」という意味です。地域によっては「伝統食」が根づいていることもありますが、やはりその土地で収穫できた素材や旬のものを食べると、体が健康的でいられます。
また、地元の食材を料理に取り入れれば地産地消にもつながりますね。
一物全体|食べ物の命をまるごといただく
一物全体(いちぶつぜんたい)とは、「分割されておらずありのままの姿であること」を意味します。そこから転じて、マクロビオティックの世界において「食材を全部丸ごと食べよう」という思想が生まれました。
自然の恵みに感謝し、生命の息吹を感じて、1つ1つの食材を大切にしながら、皮や葉っぱなども余すところなく食べ切ります。普通の調理では捨てられてしまう部分には栄養もたくさん詰まっているので、ゴミを減らせてエコになり、栄養面においても健康的で、まさに一石二鳥です。
陰陽調和|バランスや調和を大切にした食べ方をする
陰陽とは、「何事にも相対する関係の存在がある」ということ。世の中のすべての事象において、陽性のみや陰性のみということはないのです。
その中でも、マクロビオティックの提唱者である桜沢如一は、陽を「収縮していく求心的なエネルギー」、陰を「拡散していく遠心的なエネルギー」と定義しました。食事においては、温かいものは陽性、冷たいものは陰性、動物性たんぱく質は陽性、甘いものやすっぱいものは陰性…といった特徴があります。
陰陽には優劣があるわけではなく、双方のバランスを取ることが重要です。この、陰陽両方の均衡を保とうとする姿勢を「陰陽調和(いんようちょうわ)」といいます。食事においても「陽性のものと陰性のものをバランスよく摂りましょう」というのが、マクロビオティックの教えの基礎にあるのです。
マクロビの玄米菜食とは|肉や動物性食品は勧められていない
マクロビオティックの考え方においてキーワードとなるのが「玄米菜食」です。その理由や、玄米菜食で栄養が偏った際の補てん方法を説明します。
ナゼ玄米が勧められているの?
マクロビの世界では、「一物全体」というキーワードがあることをお伝えしました。玄米はまさに一物全体。土に蒔けば芽が出るという生命力を持っています。
さらに、玄米の胚芽や表皮(ぬか)の部分には、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素がたくさん含まれています。精白した米は「一物全体」ではありませんし、玄米に比べて栄養面でも劣るのです。
また、玄米は陰陽の考え方においても、「中庸」といって陰と陽のバランスが取れた中間の存在であると考えられています。そのため、マクロビ食の中心とされているのです。
マクロビ料理で陥りやすい栄養不足と補い方
マクロビオティックでは、肉や魚などの動物性たんぱく質を積極的に摂ることは勧められていません。肉類は消化に時間を要するので、体に負担がかかりやすいとか、動物性たんぱく質の摂りすぎは悪玉コレステロールの増加につながりやすくなるためと考えられています。
しかし、肉や乳製品の栄養素を他の食品で完全に補えるわけではありません。たんぱく質はもちろん、ビタミンB群や鉄、亜鉛などが不足することがあります。
マクロビオティックで肉の代わりによく使われるのが植物性たんぱく質の大豆製品ですが、ほかにもナッツ類や海藻、小松菜など、栄養を豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。必要に応じて、肉や卵や乳製品を摂ってもかまいません。
マクロビの根本である「健康的に長生きする」ためには、体に負担をかけることが一番良くありません。時には柔軟に対応することが大切です。
マクロビオティックとベジタリアンはどこが違うの?
マクロビオティックの理論がわかったところで、続いてはベジタリアンとの違いに迫っていきます。
ベジタリアンとは|ラクト・ベジタリアンやヴィーガンなど
ベジタリアンは「菜食主義者」とも呼ばれます。大きく分けて4つに分類されます。
- ラクト・ベジタリアン:肉や魚や卵は食べないが、乳製品は食べる
- ラクト・オボ・ベジタリアン:肉や魚は食べないが、卵や乳製品は食べる
- ペスコ・ベジタリアン:肉は食べないが、魚・卵・乳製品は食べる
- ヴィーガン(ピュア・ベジタリアン/完全菜食主義者):肉も魚も卵も乳製品も動物性の食品は一切食べない
ベジタリアンには宗教上の理由や健康/病気、動物愛護などさまざまな背景があります。その中でもヴィーガンは「動物を苦しめない」という考え方が根底にあるので、食べ物だけでなく身に着けるものも、動物の毛皮を避けたりシルクの服を着なかったりと徹底されています。
マクロビとの考え方の違い
マクロビは、食材を大切にしながらバランスの取れた食事をし、健康的に長生きすることを目指すものでした。
一方、ベジタリアンは、動物の保護や地球環境について考える人、宗教による教えを守っている人、アレルギーや病気など体の事情でやむを得ない人などさまざまなパターンがあります。
肉・動物性食品や商品についての考え方の違い
マクロビオティックでは、肉や動物性たんぱく質は控えることが推奨されています。これは、消化のしにくさや悪玉コレステロールの増加など、体への影響が理由でした。しかし、食べてはいけないというわけではありません。
ベジタリアンには4つのタイプがありましたが、いずれにも共通するのが「肉を食べない」ということ。体調や動物愛護、環境面などの事情でしたね。しかし、肉以外の動物性食品に関しては、乳製品はOK、魚や卵はOKなどパターンがさまざま。
ベジタリアンの中でもヴィーガンにおいては、あらゆる動物性のものを断つことで、動物の命を守るという根底の信条が守られています。
マクロビでは動物性食品は控えめに!
マクロビオティックでは、肉・魚・卵などの動物性食品をなるべく避け、ナチュラルで陰陽のバランスが取れた食事をすることが大切です。ただし、動物性食品が完全にダメというわけではありませんでした。
ベジタリアンとマクロビオティックの違いも理解していただけたことでしょう。マクロビオティックの思想に共感した方は、これから日常の食卓で使う食材に意識を向け、体にやさしく健康につながる食事を心がけてみてください。