More Nature More Nature
オリーブオイルを囲う葉っぱ

植物油脂とは? どんな種類があるの? トランス脂肪酸も植物油脂の仲間なの?

eat

2022.01.19

植物油脂は多くの食品のパッケージ表示に見られますが、植物油脂の種類や特徴については詳しく知らない人もいるのではないでしょうか。

「植物油脂は植物性の油? ごま油やなたね油のこと?」

「植物油脂はマーガリンのことでしょ? 体に悪いんじゃ……」

植物という言葉のイメージで「体にいい」と思う人もいれば、トランス脂肪酸と混同されることもあり安全性に疑問を持つ人もいます。
ずばり植物油脂は植物生まれの油脂です。毎日の食事でおなじみの油もたくさんあります。

  • ごま油
  • なたね油
  • コーン油
  • 大豆油
  • オリーブオイルなど

ただ、マーガリンなど植物由来であるものの、トランス脂肪酸を含む加工油脂も存在することから、「体に悪そう……」とネガティブなイメージをもたれる場合もあるのです。

そこで本記事では、植物油脂への理解を深めるため、

  • 植物油脂の種類と特徴
  • 食用植物油脂の安全性
  • トランス脂肪酸の種類と特徴
  • 安全な植物油脂の選び方

について詳しく解説します。

さらに、安心して植物油脂を食すため、JAS法が適用される食用植物油脂の一覧やおすすめの商品を紹介。

本記事を最後まで読んでいただければ、植物油脂の見分け方がわかるだけでなく、トランス脂肪酸との違いも見極められるはずです。ぜひ、最後までお読みいただき、これからの健康な食生活のためにお役立てくださいね。

植物油脂とは植物から採取される油脂のこと!

オリーブオイルを注ぐところ

植物の実や種子から採取される油脂を総じて植物油脂といいます。植物油脂には食用だけでなく、ろうそくや石けん、塗料など幅広い用途があるのも特徴です。ここでは、植物油脂の種類について詳しく解説していきます。

植物油脂にはどんな種類があるの?

植物油脂には大きく分けて2つの種類がありますが、2つを分けるポイントは「形状」です。それぞれ具体的な種類を挙げながら紹介します。

植物油の原料|常温で液体のもの

常温で液体のものが植物油です。よく知られている植物油の一例を挙げましょう。

  • ごま油
  • なたね油
  • コーン油
  • 大豆油
  • 米油
  • オリーブオイル
  • サフラワー油

ごま油やオリーブオイルのようにそのまま食すものもあれば、なたね油やコーン油のように調理に使うものもありますし、椿油のように化粧品などに利用されるものもあります。

植物脂の原料|常温で固体のもの

植物油に対して、常温で固体のものが植物脂です。どのような種類があるか一例を示しましょう。

  • ヤシ油
  • パーム油
  • カカオ脂
  • 木蝋 (もくろう)

ヤシ油やパーム油、カカオ脂は食品から洗剤などの日用品にまで広く利用されています。また、木蝋はハゼノキという植物から抽出され、ろうそくやワックス剤として使用される植物脂です。

食用植物油脂の日本農林規格とは?|植物油脂とJAS制度

植物油脂には食用から工業用まで混在するため、食の安心への基準としてJAS法が適用されてきました。JASとは「Japan Agricultural Standard」の頭文字を取ったもので、日本農林規格のことです。

ただ、平成27年に施行された食品表示法により、JAS法を食品衛生法とともに一元化。JAS法は食品表示法の中で「農林物資の規格化に関する法律」として、現在でも運用されています。

では、JAS法の適用によって食用植物油脂が安心であると示される根拠はなんでしょうか。具体的に見ていきましょう。

  • 植物の種子などを原料とした食品添加物を使用しないピュアな油脂である。
  • 等級、油種、油脂の品質といった3項目で規格を構成している。
  • 名称や原材料名など法で義務付けられた表示事項をラベリングしている。
  • 法律にもとづく厳格な審査に合格した認定工場で製造されている。
  • 認定工場では必要な資格を有する担当者のもとで管理されている。
  • 国の登録認定機関が製造から品質管理までを定期的にチェックしている。

以上は極めて簡潔にまとめたものですが、食用植物油脂の安全性がわかるだけでなく、購入時の安心感にもつながることでしょう。

◆JAS法が適用される食用植物油脂一覧

食用サフラワー油
食用ぶどう油
食用大豆油
食用ひまわり油
食用とうもろこし油
食用綿実油
食用ごま油
食用なたね油
食用こめ油
食用落花生油
食用オリーブ油
食用パーム油
食用パームオレイン
食用パームステアリン
食用パーム核油
食用やし油
食用調合油 ※2種以上の食用植物油脂をブレンドしたもの
香味食用油 ※ラー油のような食用植物油脂に香料や香辛料、調味料などを加えたもの

出典:食用植物油脂の日本農林規格|農林水産省

トランス脂肪酸も植物油脂の仲間なの?

バターをパンに塗る

植物油脂をトランス脂肪酸の仲間だと認識し、「体に悪い油」と考える人もいます。では、実際どうなのでしょうか? ここでは、トランス脂肪酸とは何なのか、植物油脂との関係はどうなっているのかについて解説します。

トランス脂肪酸とは不飽和脂肪酸の一種

脂肪酸には不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の2つがあり、トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種です。それぞれの特徴を簡単に紹介しましょう。

◆不飽和脂肪酸

  • 植物性の油に多い
  • 常温で液体をしている
  • 炭素の二重結合がある

◆飽和脂肪酸

  • 動物性の油に多い
  • 多くが常温では固体である
  • 炭素の二重結合がない

特徴だけを見ると、トランス脂肪酸が不飽和脂肪酸だからといって「体に悪い」と定義づけられるものではないとわかります。実は、トランス脂肪酸には天然に出来たものと加工や精製によってできるものがあるのです。

天然のトランス脂肪酸|牛肉や牛乳など

牛や羊などの動物の体内で作られるのが天然のトランス脂肪酸です。したがって牛乳や牛肉にもトランス脂肪酸が含まれてはいます。このように天然のトランス脂肪酸は、自然に出来ているものなので「バターは体にいい油」とイメージされる理由につながっています。

加工や精製でできるトランス脂肪酸|ショートニング・マーガリンなど

一方、植物油脂に水素を添加して加工・精製されたものが、ショートニングやマーガリンなどの加工油脂です。もしかすると、「バターにもトランス脂肪酸は含まれているのに、なぜショートニングやマーガリンにはマイナスイメージがあるのだろう?」と疑問に感じる人もいるかもしれません。

バターに比べると、トランス脂肪酸の含量が約3~4倍と多いのも根拠のひとつでしょう。また、加工されているという点も影響していると考えられます。 ※注1

では、そもそもトランス脂肪酸が「体に悪い」とされる理由はなんでしょうか。ひとつには、WHOの報告書で「トランス脂肪酸の働きによりHDLコレステロール(善玉)が減少し、LDLコレステロール(悪玉)が増加する。よってトランス脂肪酸を摂取しすぎると動脈硬化を招き、虚血性心疾患になる可能性を高める」と発表されたことが挙げられます。

さらに報告書を受け、欧米ではトランス脂肪酸を規制する動きが活発になったことで、日本でも「トランス脂肪酸は体に悪い」という認識が広まりました。現状として日本では欧米のような規制を行っていませんが、世界保健機関(WHO)の勧告である「1日当りのトランス脂肪酸摂取量を総摂取エネルギー量の1%未満にすること」を目安に、食品メーカーなどは対象となる食品の「1食当りのトランス脂肪酸含量」を減らすよう努めています。

※注1食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書(内閣府食品安全委員会)

安全な植物油脂の選び方は?

食用油とハーブ、野菜
植物油脂に含まれるトランス脂肪酸について説明してきましたが、全ての植物油脂が危険というわけではありません。では、安全な植物油脂を選ぶにはどうしたらいいのでしょうか。選び方のポイントを紹介していきます。

抽出方法を確認しよう

植物油脂は原料となる油分を含んだ植物の種子や実から抽出されます。抽出方法は大きく分けて、低温圧搾法、高温圧搾法、溶剤抽出法の3種類に分けられ、低温圧搾法がもっとも安心と言われています。

しかし、低温圧搾法では油脂を抽出できない原料もあるため、一概にその他の抽出法が悪いとは言えないことに注意しましょう。

低温圧搾法とは

低温圧搾法は伝統的な油脂の抽出法でもあります。

原料を選別した後、破砕や加熱をして油脂を抽出しやすくしたものに圧力をかけて抽出する方法です。

低温圧搾法では加熱する温度に基準があり、国ごとに変わりますが40~65℃以下の温度で抽出する必要があります。あまり加熱しないため熱に弱い栄養素が壊されづらく、品質の高い油脂を抽出することができます。

高温で処理することがなく、精製の過程も少なくて済むため、トランス脂肪酸が発生しづらいというのも安心な方法と言われる理由になっています。

高温圧搾法とは

高温圧搾法は油脂を抽出しやすくするために低温圧搾法よりも高い温度で原料を加熱してから圧力をかけています。

抽出された油脂は低温圧搾の場合よりも不純物が多く、取り除くために精製が必要です。油脂はこの過程で高温にさらされトランス脂肪酸が発生しやすくなったり、油脂の栄養素が不純物とともに取り除かれてしまいます。

また、精製の過程で添加物を加えている場合もあります。

溶剤抽出法とは

溶剤抽出法は、圧搾法では油脂を抽出できない場合や、一度絞った絞り粕から抽出する場合に使われる方法です。原料に食品添加物である溶剤を加え、油脂が溶け出してきた溶剤を蒸留して油脂を抽出します。

高温圧搾法と同じく、不純物を取り除くために精製が必要で有害物質やトランス脂肪酸が発生してしまう可能性があります。

使われている溶剤は毒性があると考えられているものもあり、蒸留や精製の過程でほとんどが取り除かれますが、わずかに残留している可能性があることに注意が必要です。

原材料名を確認しよう

トランス脂肪酸は食用精製加工油脂やマーガリン、ショートニングに多く含まれるため、これらが含まれる食品を避けることでトランス脂肪酸の摂取量を減らすことができます。

その他に、植物油の原料に遺伝子組換えの植物が使われている場合があり、これらの食品が健康や環境に悪影響を及ぼす可能性が指摘されているため、遺伝子組み換え食品が使われていないかどうかを確認することも重要です。

植物油の原料を栽培するには農薬や化学肥料が使われています。これらの化学物質が残留し体内に取り込まれると健康に悪影響を及ぼす危険性があるため、気になる場合は無農薬や有機栽培の原料が使われているものを選ぶと良いでしょう。

必須脂肪酸が含まれるものを選ぼう

植物油脂には植物由来の栄養成分が含まれています。その中でもオメガ3系、オメガ6系脂肪酸と呼ばれる必須脂肪酸が含まれるものを選びましょう。

必須脂肪酸は必要不可欠な栄養素の一つですが体内で作ることができないため、食品から摂る必要がある脂肪酸です。

オメガ6系脂肪酸はリノール酸と呼ばれ、コーン油や大豆油、ごま油など身近な植物油にも含まれています。しかし、リノール酸は摂りすぎると炎症系の疾患や自己免疫疾患の原因になるとも言われており、そのバランスを取ってくれるのがα-リノレン酸とも呼ばれるオメガ3系脂肪酸です。α-リノレン酸はえごま油やしその実油などに多く含まれています。

調理方法で選ぼう

植物油は加熱に向いたものと生のままで食べるのに向いたものがあります。加熱調理には大豆油やコーン油、菜種油を使うと良いでしょう。ごま油や落花生油は香りが良く料理の風味を豊かにしてくれます。

あまに油やえごま油は加熱すると酸化しやすいため、ドレッシングやカルパッチョなど生で食べる場合におすすめです。

酸化しにくい容器のものを選ぼう

植物油は光や空気に触れると酸化しやすいものが多くなっています。酸化を防ぐため空気を通しにくい密閉された容器や、遮光性のある色付きの瓶などの容器に入ったものを選ぶのが重要です。

1~2ヶ月程度で使い切れる量のものを選ぶようにするのも良いでしょう。開封した植物油は直射日光の当たらない涼しい場所で保管し、酸化を防いでください。

身体に安心な植物油6選

様々な食用油のボトル
安全な植物油の選び方は理解していただけたと思います。最後に安心な植物油を6つ紹介しますので、参考にしてみてください。

ホクレン|北海道こめ油

北海道産の米ぬかから抽出されたこめ油です。原料の生産から油の抽出まで国内で生産されています。

米ぬかから抽出された米油にはビタミンEを初めとした精製米には含まれないビタミンやミネラルが含まれているのが特徴です。

油切れがよくからっと揚がるので天ぷらやフライなどに向いています。

ホクレン|北海道こめ油

日清オイリオ|アマニ油プラス

菜種油、こめ油をベースにアマニ油をブレンドした植物油です。アマニ油にはα-リノレン酸が豊富に含まれており身体に良い植物油として注目されています。

アマニ油は加熱に弱く酸化しやすいという特徴がありますが、アマニ油プラスはベースに菜種油やこめ油が使われており加熱調理にも使うことができます。

ガルシア|エキストラバージンオリーブオイル

スペインで作られているエキストラバージンオリーブオイルです。国際基準よりも厳しい独自基準の品質を維持するためオリーブの栽培から抽出までを一貫して製造しています。

オリーブの収穫から24時間以内に抽出しているため、酸度が低く新鮮なオリーブオイルとなっているのが特徴です。

朝日|えごま油

えごまのみから、低温圧搾法で抽出されたえごま油です。えごまにはα-リノレン酸が豊富に含まれており、小さじ一杯弱のえごま油で一日の摂取量を補給することができます。

品質の管理も国内の自社工場で一貫管理を行い、添加物や保存料を使用していないことも安心ですね。

ボトルタイプの他、使い切りの分包タイプや、健康食品として取り入れやすいカプセルタイプもあります。

勝山ネクステージ|仙台勝山館MCTオイル

MCTとは中鎖脂肪酸のことで、ココナッツやパームオイルなどのヤシ科の植物に含まれており、MCTオイルは100%MCTで構成されている植物油です。MCTは消化吸収されやすく、すぐにエネルギーに変換されるため体脂肪として蓄積されづらいという特徴を持っています。

ココナッツオイルと違い、無味無臭なため様々な料理に使いやすく、酸化や劣化しづらいのも特徴です。

CRUDIGNO|イタリア産グレープシードオイル

イタリア産のぶどう種子から低温圧搾法で抽出されたグレープシードオイルです。ポリフェノールやビタミンE、オレイン酸、リノール酸などの栄養が豊富に含まれています。

まろやかで風味豊かなのでサラダのドレッシングなど、生食用に使うことができます。

植物油脂とは植物から採取される油脂のこと

オリーブオイルと3つの小瓶

ここまで本記事では、植物油脂について種類や特徴を示しながら、食用としての安全性にも触れてきました。最後までお読みいただき、以前よりも植物油脂への理解が深まったのではないでしょうか。

ここで簡単に内容をまとめておきましょう。

  • 植物油脂とは植物から採取される油脂全体をさす
  • 植物油脂には植物油と植物脂がある
  • トランス脂肪酸には天然型と加工型がある
  • 加工型のトランス脂肪酸も規定量未満であれば問題なく摂取できる

食への安心を気遣っていると、人づての情報やイメージだけで「体にいい」「体に悪い」と判断してしまうことがあります。毎日の大切なテーマだからこそ、正しい理解で毎日の食事をおいしく健やかにさせたいものですね。

参考:
トランス脂肪酸の摂取と健康への影響(農林水産省)
食品に含まれるトランス脂肪酸の由来(農林水産省)
 植物油とJAS制度(日本植物油協会)

関連するキーワードで他の記事を探す
RECOMMEND