近年、よく耳にする「ヴィーガン(ビーガン)」という言葉。
動物性の食材を口にしないスタイルをさす「ヴィーガン」は、動物愛護の分野からのみならず、健康の分野からも大いに注目されています。メリットが多いとされるヴィーガンですが、デメリットに注目する人は少ないかもしれません。
ヴィーガンの生活スタイルに興味をある人は、ぜひその欠点にも目を向けてみてください。今回は、ヴィーガンの不健康な点について注目してみましょう。
ヴィーガンとは完全菜食主義者のこと!
ヴィーガンとは、完全菜食主義者のことを指します。では、言葉の響きもよく似ている「ベジタリアン」とはどこが違うのでしょうか。
ハリウッドのスターにも多いヴィーガンとはどんな食生活を指すのでしょうか。
ベジタリアンとヴィーガンはどこが違うの?
ベジタリアンやヴィーガンに対する関心が高くなっている昨今ですが、この2つの食事法にはどんな相違があるかご存知ですか。
ベジタリアンもヴィーガンのいずれも、肉や魚は口にしません。
しかしベジタリアンは、乳製品やはちみつなど、動物由来の食品のいくつかは摂取します。
いっぽう、ヴィーガンはこうした動物由来の食品は一切口にしない食事法を指します。また、食品の製造過程で動物性の成分が使用される場合も、その食品は避けるのがヴィーガンのありかたです。
たとえば、ベジタリアンでも口にするワインについてみてみましょう。ぶどうを原材料とするワインは、ヴィーガンでも摂取可能と思う方が多いでしょう。ところが、通常のワインは清澄剤として動物由来のゼラチンが使用されます。
そのため、最近ではこうした成分を使用しないヴィーガン用ワインが販売されているのです。
また、白砂糖も同様です。砂糖を精製する過程で、骨炭という活性炭が使用されます。そのため、ヴィーガンの人々は白砂糖も口をしないのです。
そもそも、ヴィーガンという概念は1944年に生まれました。ヴィーガンの父と呼ばれているドナルド・ワトソンは、もともとベジタリアンです。
ワトソン氏は、動物性の食材をすべて除去するヴィーガンという言葉の生みの親でもあり、その正しさを証明するかのように2005年に95歳という長寿を全うして亡くなりました。
現在、ワトソン氏の故国イギリスには54万人のヴィーガンが存在するといわれています。
ヴィーガン生活ではどんなものを避けるの?
それでは、実際にヴィーガンの生活の中で避けるものとはなんでしょうか。
ヴィーガン生活では案外規制されるものが多く、気がつかずに口にしたものが動物性であったということもたまさかに起ります。
さらにあまり知られていないかもしれませんが、ヴィーガンは口にするものだけではなく身に着けるものにも動物性のものは除去します。
ヴィーガンの生活を具体的にみてみましょう。
動物性食品を摂取しない
一口に、「動物性の食品は口にしない」といっても実は簡単なことではありません。
まず、言わずもがなのことですが肉類、魚介類、乳製品は口にできません。卵そのものだけではなく、卵を原料にした麺類もアウトです。
また、小麦粉を主原料とするパンならば問題ないと思うかもしれませんが、市販のパンには牛乳やバターなど動物性の原材料が含まれています。
飴をはじめとするお菓子類についても、着色料が動物性のタイプがあります。ですから、原材料のラベルの部分をよく読むだけではなく、着色料の種類についても熟知する必要があります。とくに、赤色は貝を原料にしたものがあるので要注意。
さらに、チューインガムにもラノリンなどの動物性の成分が含まれています。
そのほかお菓子では、マシュマロに使用されるゼラチンが動物性であることが多いようです。まずもって、さきに書いたように白砂糖そのものがヴィーガンには問題ありなのです。
アルコールはどうでしょうか。
たとえばもっとも一般的なビールには、アイシングラスという魚から作られる成分が含まれます。前述したように、ワインも「ヴィーガン用」とうたっていない一般的なものには、アルブミンなどが使用されているので飲むことはできません。
絶対安全と思われる市販のオレンジジュースにも、ごくたまにですが魚に由来するオメガ脂肪酸が加えられているタイプもあります。というわけで、あらゆる食材を選ぶ際に、原材料のラベル部分をよく読む必要があるのがヴィーガン生活なのです。
ウールや毛皮などを身につけない
ヴィーガンというのは、食生活のみならず生活スタイル全般に及ぶことをご存知でしょうか。
たとえば、医薬品を摂取する際にも、その薬を開発する過程で動物実験が行われていれば摂取を拒否することもそのひとつです。
衣食住全般に及ぶこのヴィーガン、着るものはどうでしょうか。
当然、毛皮や革製品はクローゼットから除外されます。また、繭から作られるシルクや羊毛が原料となるウールもその対象となるのです。
ヴィーガンになると不健康になるの?
ご覧のように、ヴィーガンの生活を送るのは一貫した意志を要します。食生活にも厳しい制約があるため、ヴィーガンに関しては賛否両論があるのです。
今度は、ヴィーガン生活に関するデメリットを考察してみましょう。
ナゼ? ヴィーガンが不健康になる!と言われる理由
海外で急増しているヴィーガン。学校の給食でもベジタリアンやヴィーガンを求める親たちが増え、各国ではさまざまに対応しています。
しかし、ヴィーガンに関しては気をつけなくてはならない点が多く、子どもにヴィーガン食を与える場合は小児科医の証明が必要という国もあります。
専門家がヴィーガンに対して警鐘を鳴らしているのは、ヴィーガンという食のスタイルがまるでファッションのような流行を呈しているためです。ヴィーガンの食生活を遂行するにはまず、さまざまな知識を得る必要があります。
生半可な覚悟でヴィーガンの食生活を行うことは、かえって健康を損ねる可能性が高くなるからです。それはどういうことでしょうか。
ヴィーガンになるとさまざまな食材の摂取ができなくなることから、栄養の偏りがまず問題になる、というわけです。
ヴィーガン生活は本当に不健康になるの?
専門家たちがまず懸念しているのは、次のようなことがあげられます。
肉や卵の摂取ができないヴィーガンは、満腹感を得るためにどうしても炭水化物の過剰摂取が多くなるという点がまずひとつ。
炭水化物を取りすぎれば、結果として血糖値が上昇してしまうからです。また、長期的にみても炭水化物を摂取しすぎると、肝臓への負担も大きくなります。
また、豆腐をはじめとする大豆の加工品は、ヴィーガンの人にとっては貴重なたんぱく源となっています。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとし。
大豆の取りすぎも、植物性エストロゲンが過剰になり免疫疾患を誘発する可能性が高くなるのです。
さらに、ヴィーガン用の食材はすでに調理済みのものも数多く市販されていますが、こうしたものは塩分の量も無視できません。
野菜や果物や豆類でお腹を満たすことはもちろん、非常に健康的なことです。しかし、動物性の食材を完全に除去すると、ビタミンB12やDHAをはじめとする栄養素を摂取することが難しくなることも。
こうした栄養を意識して摂取する努力が必要になってきます。
ヴィーガンは完全菜食主義のこと! 自分の体と相談しながら進めよう
自らの食生活を見直し、ヴィーガン生活を選択することは健康にはメリットが多い。これはまちがいありません。
しかし、ヴィーガンになるのには大変な量の知識を要します。正しい情報を収集することが、ヴィーガン生活の第一歩であるからです。
完全なヴィーガンになる前に、まず食生活の中から糖分や動物性たんぱく質、加工品の量を減らしてみてはどうでしょうか。全粒粉の食材を増やすことも、ヘルシーな食生活への大きな一歩となります。
健康に害を与えないように、自分の体と相談しつつ正しい知識を持ってヴィーガンという選択をすることが、最重要事項といえるでしょう。