料理によく使われる化学調味料。
「化学調味料」という名前からして人工的なイメージを持ち、あまり摂取しない方がいいのではないかと思う人も多いのでは?
今回はそんな化学調味料の成分や何からできているかなど、気になる点を解決します!
化学調味料とは?
化学調味料とは、料理にうま味を加えるための調味料です。人工調味料の一種で、かつお節、昆布などのうま味成分を化学的に合成して工業的に生産したものです。
昆布のグルタミン酸ナトリウム、かつお節のイノシン酸ナトリウム、貝類のコハク酸ナトリウムなどを混合したものもあり、これらは複合化学調味料と呼ばれます。
天然のうま味を工業的に生産した人工調味料|食品添加物の一種
先ほどもご紹介したように、化学調味料とは天然の素材である昆布やかつお節に含まれているうま味成分を人工的に生産した調味料で、食品添加物の一種です。
うま味調味料との違いとは?
分かりやすく言うと、化学調味料とうま味調味料は同じものです。「化学調味料」という言葉は、1960年代に公共放送の料理番組で商品名を出さないよう便宜的に使用された名称です。
そこから化学調味料という名称が広がりました。しかし、1980年代頃から食品に対しての「化学」、「合成」といった非自然的な言葉に対して敬遠する風潮やイメージの悪さから「うま味調味料」と呼ばれることが多くなりました。
うま味を付与するという特性や原料や製法について、誤解を招くという意味からも“うま味調味料”という名称への 変更が促された背景があります。
1990年に改訂された「日本標準商品分類」や2002年に改定された「日本標準産業分類」などの行政用語も化学調味料からうま味調味料に変更されています。
化学調味料の主な成分について解説!
化学調味料の成分は様々あります。市販の化学調味料は、以下で紹介するそれぞれのうま味成分を組み合わせてよりうま味が強くなるよう配合されています。今回は代表的なものを4つご紹介します。
化学調味料の主成分はグルタミン酸ナトリウムなど
化学調味料の主成分はグルタミン酸ナトリウムです。グルタミン酸ソーダとも言われ、化学名でMSGと呼ばれることも。1908年に池田菊苗が、昆布のうま味成分としてグルタミン酸を発見しました。
初期の製法は小麦グルテンや脱脂大豆タンパクを原料にした分解抽出法でしたが、1956年からは微生物を利用した発酵法が用いられています。現在は、サトウキビ、キャッサバ芋やトウモロコシを原料として作られることもあります。チーズやトマト、白菜といった野菜にも含まれています。
グルタミン酸はアミノ酸の一種で、私たちの体重の約20%を構成するたんぱく質はグルタミン酸などのアミノ酸でできています。ですので人間の体にもグルタミン酸は含まれており、非常に身近なものであるといえます。
実は赤ちゃんが初めて飲む母乳にも、グルタミン酸はたくさん含まれているのです。生まれてすぐから、私たちはグルタミン酸に出会っていると言えますね。
イノシン酸ナトリウムも化学調味料の主成分の1つです。かつお節のうま味成分がこのイノシン酸ナトリウムです。また、鶏肉や牛肉、豚肉にも多く含まれています。イノシン酸ナトリウムは核酸系うま味物質に分類されます。
昆布のうま味成分であるグルタミン酸ナトリウムと合わせると、うま味の相乗効果で更にうま味が強くなると言われています。
グアニル酸ナトリウムは干しシイタケをはじめとし、乾燥キノコ全般、のり、ドライトマトなどにも含まれるうま味成分です。グアニル酸ナトリウムもイノシン酸ナトリウムと同様に、核酸系うま味物質です。
コハク酸はアサリなどの貝類に多く含まれています。コハク酸は熱を加えると溶け出すため、アサリやしじみの味噌汁を作る際に、わざわざだしを取らないことが多いのはこのためです。
これら4つのうま味成分は、食品衛生法で食品添加物の調味料に分類されています。また、食品衛生法での安全性試験を全てクリアしているので、安全であると認められています。
日本だけでなく、米国(FDA)、国連(FAO/WHO)からも安全であると同様に認められています。
■原材料名表示では|調味料(アミノ酸)など
加工食品に使用されている場合には、「調味料(アミノ酸)」または「調味料(アミノ酸等)」「調味料(核酸)」と表示されます。
うま味成分はどこから見つかったの?|こんぶやかつお節
先ほどご紹介したようにうま味成分は様々あり、その食品により含まれるうま味が異なります。代表的なものは、昆布のグルタミン酸ナトリウム,かつお節のイノシン酸ナトリウム,シイタケのグアニル酸ナトリウム,貝類のコハク酸ナトリウムなどが有名です。
上でも少し触れましたが、古くから自然とうま味に親しんできたからでしょうか、実はうま味は日本人が発見しています。
1908年に東京帝国大学の池田菊苗が、昆布からグルタミン酸を取り出すことに成功。昆布だしの主成分がグルタミン酸であることを発見しました。そこから「うま味」という名が付き、世界中にうま味が広がることになりました。
使用しない方がいい? 化学調味料の摂取は危険なの?
では、巷で聞かれることもある「化学調味料は危険」というのは実際どうなのでしょうか。しかし、危険といわれるようになった理由を知っている人は少ないのではないでしょうか。以下ではその経緯や理由をご紹介します。
なぜ? 化学調味料が危険と言われた理由|中華料理店症候群
中華料理店症候群とは、1968年にアメリカで中華料理を食べた人が頭痛、発汗、腕や首のしびれといった症状を訴えたことから認識された問題です。中華料理に大量に含まれるグルタミン酸ナトリウムが原因として考えられ、その後アメリカで臨床実験が行われました。
しかし被験者に大量のグルタミン酸ナトリウムを与えても症状が再現されず、中華料理症候群の原因がグルタミン酸ナトリウムであるということは立証されませんでした。
しかし、グルタミン酸ナトリウムには血管を収縮させる働きがあるため、これが片頭痛の原因となっていると唱える説もあります。
また、グルタミン酸ナトリウムが人間の体に有害であるという公的な研究結果は出ていませんが、気になる報告も。動物実験では肥満抑制に関わるホルモンのレプチンがグルタミン酸ナトリウムにより破壊されるという結果が出ています。
2008年には中国で「グルタミン酸ナトリウムを使用する家庭の方が肥満の人が多い」という研究結果もあるのも事実です。
気になるなら、できるところから減らしてみよう
食べるもの由来のものなので、大丈夫だとは言われています。日本や世界の国際機関でもその安全性は確認されているので、危険とは言い難いかもしれません。
とはいえ、リスクがあるという話もあるので、上手く付き合っていきたいですね。まずはなるべく料理に使わない、だしは昆布やかつお節などから直接とってみる。などから始めてみては?
化学調味料はうま味成分を人工的に生産した食品添加物
化学調味料とは、料理にうま味を加えるための科学的な調味料です。人工調味料の一種で、かつお節、昆布などのうま味成分を化学的に合成して工業的に生産したものです。
気になる人は、自炊の際は化学調味料を使用しないなど、自分の判断で上手に付き合っていくことをおすすめします。
参考:
統計基準・統計分類|日本標準産業分類(総務省)
Chinese restaurant syndrome: has MSG been unfairly demonised?(The Guardian)
Association of monosodium glutamate intake with overweight in Chinese adults: the INTERMAP Study(NCBI)