水耕栽培で栽培される野菜といえば、カイワレ大根や、ブロッコリースプラウト、豆苗といった野菜をイメージする人が多いのではないでしょうか。
実は水耕栽培ではレタス、水菜、バジル、トマトなどさまざまな野菜を育てることが可能です。
このページでは、水耕栽培について詳しく解説していきます。水耕栽培のメリット、デメリット、また危険性についてもあわせてお伝えします。
水耕栽培が気になっている方、また家で野菜を育てたいと思っている方にも、役立つ情報が記載されていますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
水耕栽培とはどんな育て方なの?
水耕栽培という言葉は聞いたことがあったとしても、水耕栽培について詳しく説明することができる人は、あまりいないのではないでしょうか。
ここでは、水耕栽培とは一体どのような育て方なのかを解説していきます。水耕栽培のメリットとデメリットもお伝えしますので、参考にしてください。
土を使わない栽培方法|水と液体肥料で育てる
通常、野菜は畑に植えられ、土耕栽培によって育てられます。土耕栽培に対し水耕栽培とは、液体肥料が入った水で野菜を育てる方法です。土耕栽培のように、土を使用しません。
水耕栽培には2種類あり、太陽の光を用いて栽培する太陽光利用型と、LEDや蛍光灯などの人工の光を用いて栽培する、人工光型に分類されます。人工光型で水耕栽培を行う場合は、室内で野菜を育てることが可能です。
現在日本では新しい農業として、植物工場の導入が進んでいます。植物工場では、空調、温度、湿度などすべてがコントロールされている環境で、野菜が栽培されています。
実はほとんどの植物工場では、この水耕栽培によって野菜が栽培されているのです。植物工場は、太陽光利用型と完全人工型に大別されます。人工光型植物工場では、完全に閉鎖された空間の中で、人工光を用いて野菜が生産されています。
水耕栽培のメリット・デメリットとは?
水耕栽培にはどのようなメリット、そしてデメリットがあるのでしょうか?詳しく解説していきます。
水耕栽培のメリット|収穫量が安定している
水耕栽培には、たくさんのメリットがあります。まず、天候に左右されることがないため、野菜の収穫量が安定しています。室内での栽培ですと、一年中野菜を育てることが可能です。
土壌で野菜を育てる際は、土が根っこの成長を妨害することがあります。しかし水耕栽培ですと、根を自由に伸ばすことができることから、野菜の成長速度が早まります。したがって、水耕栽培に切り替えてから、収穫量が2倍以上になったケースもあるほどです。
また、畑で野菜を育てる土耕栽培ですと、野菜によっては土づくりをしなければなりません。通気性や排気性、また保水性があるなど、良い土をつくることが土耕栽培においての基本です。
一方で水耕栽培は、液体肥料を使用するため、土づくりをする必要はありません。また、野菜についた土汚れを洗う手間も省けます。
その他にも、水耕栽培にはさまざまなメリットがあります。その他のメリットを以下にまとめましたので、ご確認ください。
- 土壌で野菜を育てないため、どこでも栽培することができる
- 肥料の濃度を自動でコントロールできるため、管理しやすい
- 狭い場所でも野菜を栽培することができる
- 農業未経験者でも始めることができる
- 家庭でも取り組むことができる
水耕栽培のデメリット|建設費など初期費用が掛かる
次に、水耕栽培のデメリットについてお伝えしましょう。水耕栽培のデメリットは、初期費用がかかってしまうことです。
大きな規模の水耕栽培を始めるには、水を循環させる設備や、専門の建物を建設しなければなりません。例えば、100坪の完全人工光型植物工場の初期投資金額は、およそ数千万円。太陽光利用型の水耕栽培の場合は、およそ1,500万円です。
植物工場で水耕栽培を行う場合、消費者の植物工場に対する認知度が低いのも、デメリットでしょう。きちんとした情報がなく、植物工場やそこで生産された野菜について、マイナスイメージを持っている人も多いです。
また、台風や地震などの災害で断水や停電が起こった場合、かなりのダメージを受ける可能性があります。水耕栽培を行う際は、徹底したリスク管理が必要です。
水耕栽培で育てられた野菜は危険なの?
ここまでは、水耕栽培や水耕栽培のメリット、そしてデメリットをお伝えしました。収穫量が安定したり、増加したりと、水耕栽培にはたくさんのメリットがあります。しかし、水耕栽培で生産された野菜は、本当に安全なのでしょうか?
ここからは、水耕栽培で育てられた野菜に危険性はないのか、解説していきます。
ナゼ? 水耕栽培の野菜が危険だと思われる理由
なぜ水耕栽培で生産された野菜は、危険だと思われているのでしょうか?その理由は、主に以下の2つです。
- 水耕栽培に使われる液体肥料の安全性に対する疑
- 水耕栽培の野菜は病害菌に弱い
水耕栽培に使用される液体肥料は、危険なのでしょうか?また、水耕栽培の野菜は、本当に病害菌に弱いのでしょうか?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 液体肥料って安全なの? 農薬も入っているの?
■液体肥料は安全な原料で作られている
水には土のように、栄養素がほとんど含まれていません。したがって、水だけでは不足してしまう栄養素を補うために、液体肥料が使用されています。
水耕栽培に使用される液体の肥料は、野菜が成長するのに必要とする、土壌に含まれる物質で作られています。人工的に作られたものではありますが、安全性の高い原料で作られていますので、成分変化も起こりにくいです。
また、肥料は国の検査をクリアしたものが販売されています。したがって、水耕栽培に使用される液体肥料の毒性は低いといえるでしょう。
しかし、長時間直射日光に当たったものや、蓋が開いたままのものは、成分変化が起る可能性があります。
液体肥料を使用した後は、蓋を閉めて、直射日光が当たらない場所で保管する必要があります。また誤飲にも注意してください。
■液体肥料と農薬
液体肥料に農薬が入っているのではないか、と思っている方もいるかもしれませんが、液体肥料に農薬は入っていません。液体肥料に農薬を入れると、化学反応が起こる可能性があり、危険だといわれています。
水耕栽培は、屋内で野菜を育てることができますので、土壌栽培のように害虫の心配もありません。
したがって、農薬を使用せずに野菜を栽培することができます。
2. 水耕栽培の野菜は病害菌に弱いのでは?
水耕栽培が病原菌に弱いのは確かです。水耕栽培では無菌の培地を使うため、病害虫の心配がありません。
しかし、野菜に悪い影響を及ぼす微生物の排除や、発生した病原菌を抑えてくれる、有用微生物の生息もまた難しいのです。したがって、カビ菌や病原菌が発生すると、瞬く間に繁殖が広がってしまう恐れがあります。
そこで病原菌の問題を解決するために、新たな技術が開発されていますので、ご紹介させていただきます。
■有機肥料による養液栽培技術
有機物を肥料として栽培する技術が開発されました。こちらの技術を用いれば、有機肥料に変更するだけで、従来の栽培装置をそのまま使えます。
したがって、そこまでコストがかからないのがメリットです。しかし、開発されたばかりの新しい技術ですので、今後引き続き研究を進めていく必要があります。
■病害菌殺菌技術
紫外線照射など病害菌を殺菌する技術を取り入れることで、病害抑制に繋げる方法が考えられています。しかしその場合、高額な殺菌装置を準備する必要があり、また電気代などの費用も必要です。
コストの問題さえ解決すれば、これまでの水耕栽培のノウハウを活かして、収穫の最大化を狙うことができます。
水耕栽培は土を使わず育てる技術!
水耕栽培は、土壌を使用せずに野菜を生産することができる技術。
室内や工場でも野菜を栽培することができますので、安全な無農薬野菜を育てることも可能です。
植物工場を建設するなど、大規模なものですとコストがかかってしまうなど、いくつかデメリットがあります。
しかし野菜が早く成長したり、収穫量を安定させることができたりと、たくさんのメリットがあります。また、水耕栽培は病害菌に弱い部分はありますが、問題を解決するために、新しい技術も開発されました。
これからますます発展していく中で、安全性も更にUPしていくのではないでしょうか。
水耕栽培は家でも気軽にできますので、この記事を読んで水耕栽培に興味を持たれた方は、ご自分でも野菜を育ててみてくださいね。
参考サイト:
養液栽培における有機物を活用した根部病害抑止技術(PDF)
(一般社団法人 日本植物防疫協会)